このほどアルファベータから出版されたベルリン・フィルの写真集は、ドイツでも昨年暮れに出版されたばかりのものです。1963年のフィルハーモニーホールのオープンでカラヤンが第九を指揮する写真が一番古く、1999年秋のベルリン芸術週間でのマーラー・ツィクルスで演奏された、ラトルの10番とアバドの「大地の歌」の写真が一番新しいようです(他に、まだ完成前の建築中の写真もあって、これもなかなか面白い)。
ラインハルト・フリードリヒという一人の写真家の長年にわたる記録の集大成ともいえるこの写真集、35年以上も長きにわたってベルリン・フィルの写真を撮り続けてきた人がいたというのも驚きです。収録された客演指揮者も40人以上にのぼり、主にリハーサル時の豊かな顔の表情が巧みに写されています。共演したソリストも30人以上が紹介されています。
カラヤンのページが一番多く、ベルリン・フィルの全盛期の貴重な記録ともなっていますが、同じページ数のアバドでは、豪華ソリストを迎えたジルヴェスターや、毎年恒例となった演奏会形式のオペラ上演なども紹介され、時代の変遷も感じさせてくれます。
ベルリン・フィルのファンとしては、個々の団員たちがソリストとして活躍する演奏風景が、70年代、80年代、90年代と、時期ごとに分けて紹介されているのも注目に値します。ティンパニ奏者だったフォーグラーが、指揮台のすぐ横で6台のティンパニに囲まれて独奏者として演奏する珍しい写真をはじめ、どれも興味深いものばかり。
1982年の創立100周年を記念する演奏会の様子も写されていますが、この頃がベルリン・フィルの一つの時期の頂点だったのではないかという気にもさせてくれます。カラヤンの指揮する「英雄」の演奏会の充実しきった雰囲気の一方で、フィルハーモニッシェ・レビューと題された小澤征爾の指揮による演奏会は、実にユニークな内容。ゲストのメニューインが指揮台で逆立ちして「運命」の最初の部分を(足で)指揮する様子。ワイセンベルク、ツィマーマンをはじめとする大勢のゲストが「おもちゃの交響曲」を演奏するシーンなど、貴重な写真が満載といって過言ではないでしょう(写真約700点)。
この写真集に関する情報は、 アルファベータのHPをご参照下さい。