香川大学吹奏楽団が今年創立30周年を迎え、第25回目の定期演奏会が開催されるとのこと、本当におめでとうございます。この区切りの年にあたって、この「アンサンブル」誌も、今回でちょうど50号を迎えるとのこと。今後も一層の内容の充実を目指して発刊を続けて欲しいものと思います。
創立30周年ということは、今から30年前の1964年の創立ということでしょうか。東京オリンピックの年です。戦後の日本の歴史を語る上でよく引き合いに出される行事ですが、私自身は幼稚園くらいの頃だったので、朧気な記憶しかありません。皆さんはまだ生まれていなかったことでしょう。
さて、創立何周年というのは、世界中あちこちの管弦楽団でもよく祝われます。比較的古いウィーン・フィルとニューヨーク・フィルは同じ1842年の創立で、1992年に共に創立150周年を祝いました。その年の3月にはウィーン・フィルは、世界ツアーの一環として日本公演も行ない、私は大阪でブルックナーの交響曲第7番を聞きましたが、大変気合いの入った演奏だったことを記憶しています。
両楽団は1967年が創立125周年だった年で、最近BSで再放送されている「バーンスタインの青少年音楽入門」というシリーズでも、1967年12月放送のある番組は「4分の3拍子に乾杯 (A Toast to Vienna in 3/4 Time)」と題され、ニューヨーク・フィルが同じ創立125周年のウィーン・フィルを祝福するという趣向で構成されています。
ベルリン・フィルはウィーン・フィルのちょうど40年後の1882年に誕生し、1982年に創立100周年を祝いました。 私はその年の秋に初めてドイツへ行く機会があり、ちょうど100年前の第1回定期演奏会と同じプログラムを演奏するというコンサートをベルリンで聞くことが出来ました。指揮はサヴァリッシュで、曲目は次の通り。
ベートーヴェン: 序曲「レオノーレ」第3番休憩が途中で2回も入り、昔の演奏会は長かったんだなぁと感じさせられると同時に、たっぷりベルリン・フィルの演奏を聞けて得したような気分もしたものです。ちなみに、夜の8時開演で、終演は10時55分でした。
ルビンシテイン: ピアノ協奏曲
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ワーグナー: 「パルジファル」前奏曲
リ ス ト : ハンガリー幻想曲
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シューマン: 交響曲第2番
ミュンヘン・フィルは1893年の創立で、昨年1993年に創立100周年を祝い、シーズン開幕の9月9日に記念特別演奏会が行なわれました。その日の朝、現地に着いてみると、やはりプラチナに近いチケットのようで、聞くのは半分諦めていたのですが、 開演の1時間前くらいに会場の前でブラブラしていると、行けなくなったというおばさんが見つかり、チケットを譲ってもらってかろうじて聞くことが出来ました\(^_^)/ 前夜のウィーンでの「ワルキューレ」の感動も覚めやらぬままに当日聞いた曲目は、「皇帝」(ピアノはバレンボイム)とムソルグスキーの「展覧会の絵」。
チェリビダッケの一歩一歩ゆっくりと歩むようなテンポから彫りの深い演奏を展開し、壮大なクライマックスを築いていく様には、驚嘆の念を禁じえませんでした。特に最後の大きな鐘(自動車会社のアウディがミュンヘン・フィルに寄贈したもの)の響きは、一生忘れることが出来ないでしょう。オーケストラの大音響の中から会場中に暖かみを持って豪快に鳴り渡るこの鐘の音は、是非また生で聞いてみたいものです。
最後に私が改めて言うまでもないことではありますが、30周年というのは、一つの契機であるに過ぎず、これからも演奏会などで質の高い演奏を聞かせてくれることが肝要ですから、今後も奮って練習に励んで欲しいと思います。私も今後の一層の発展を楽しみにしている次第です。