雑感(番外編)


鳴子ホテルの印象

今年の夏は、幼少の頃から思い入れのある鳴子温泉に宿泊することになり、有意義な夏休みとなった。 宿泊先は、鳴子ホテル。8月9日から11日までの、2泊3日。 鳴子温泉駅を出ると、ホテルのバスも迎えにきてくれていて、なかなか親切な配慮に感心した。 夜の料理は、半バイキング形式のような感じで、最初は戸惑ったが、盛りだくさんで、至れり尽くせりといった感じで、満足できた。 それに、鳴子温泉は硫黄の匂いのする温泉なので、そもそも私好みなのである。 その意味でも、久々に満足できる温泉滞在となった。 ただ、ホテルのフロント係(男性)の対応だけが、唯一、残念だった。 他の従業員の方は、みんな親切かつ献身的で、申し分なかったのだが。

今回の旅行、仙台に住む私の両親や、私の2人の子供(小学校低学年と幼稚園)と姪(小学校高学年)の3人の子供とも一緒の旅行。 父が仙台の旅行会社で予約した際に、ビール2本とジュース3本も頼んでおいたらしい。 初日の晩、食堂に食事に行くと、半バイキング形式なので、ジュース類は自由に飲めるようになっていた。 そのため、担当者の方がテーブルに来たときに、予約のジュースはアルコールに変えましょうか、と申し出てくれたのだった。 それで、ジュース3本の代わりに、ビール1本と日本酒1本を持ってきてくれたのだった。 担当者の心配りに感動したことは言うまでもない(^_^)。

ところが、翌日の朝、朝食後、部屋に戻って、出かける準備をしていると、突然、フロントから電話がかかってきたのだった。 電話は、「今晩のジュースは、どうしますか?」というものだった。 「昨晩のようにしてもらえるとありがたいのですが」と返答すると、 そういう変更はできないとのこと。 ジュースは、コーラかサイダーにしか変えられないのだとか。 どうも、前の晩の我々の変更が、お気に召さなかったらしい。 この変更に激怒して、慌てて朝早くから部屋に電話をよこしたのだろう。

もし、電話が、「昨晩、ジュースをビールに変更しましたが、そういうことは認められないので、今晩のジュースは、変更する場合は、コーラかサイダーでお願いしたいのですが」というような内容なら、こちらも、「それは大変失礼いたしました。今晩はそうさせていただきます」 と穏やかに納得して、気分を害されることもなく解決したことであろう。 ところが、何の説明もなく、いきなり、「今晩のジュースは、どうしますか?」 何か、嫌味の電話という気がしてならないのだが、どうだろう。

ちなみに、旅行会社を通しての今回の予約。 予約した父に金額を聞くと、正規の料金よりは安めの感じのように思える。 飛行機でいえば、エコノミークラスの乗客みたいな感じといえるのかもしれない。 もしそうだとすれば、事前に予約した内容の変更は一切認められないということぐらいは、私も当然だと思うし、 私がホテルの従業員だとしても、同様に対処するだろう。

まあ、しかし、問題は、2泊連泊する客に、連絡の不徹底にせよ、担当者のミスにせよ、初日の晩、ジュースからビールへの変更を認めてしまったこと。 その場合、翌日、どうするか。

という選択肢から、鳴子ホテルのフロント係は、断固たる処置を選んだということだろう。 で、次の問題は、客にどう対応するか。 一番穏便だと思うのは、食堂の担当者に、「昨晩はビールに変更しましたが、本当はコーラかサイダーにしか変更できませんので、そうしていただけませんか?」と言わせることか。 こちらも、親切な従業員の方にそう言われれば、「はい、わかりました」とすんなり納得できたであろう。 しかし、フロント係は、食堂の担当者に任せたくなかったのか、 あるいは、担当者が客から詰め寄られることをおそれたのか、 自分から嫌味を言いたかったのか、とにかく自分で電話する方法を選んだ。 それにしても、電話の第一声が、何の説明もなく、いきなり「今晩のジュースはどうしますか?」 これから、鳴子峡でも歩こうと準備している最中に、 何と、情けなくなるような、また不愉快な電話であることか。

電話がかかってきた時、部屋に子供が不在だったので、コーラとサイダーへの変更については、あとで連絡させていただく、ということにしたのだが、 夕方、食堂へ行くと、当初の予定通り、ビール2本とジュース3本がテーブルへ。 フロントからきついお達しがあったのだろう(^_^)。 「あの、実は、コーラ2本、サイダー1本でお願いするつもりだったのですが」と申し出たら、 もちろん、快く変えていただいたが、 阿呆なフロント係のせいで、ジュース3本が無駄になってしまったではないか。

まあ、食堂で接客している従業員の感覚からすれば、あれだけ料理を大判振る舞いしている 状況(ステーキやら牛タンシチューのパイ包みやら、頼めばいくらでも出てくる)で、 ジュース数本がアルコールになるぐらい、どうでもいいといった感じになるような気もする。 それに、客の立場で考えれば、当然の対応でもあろう。 やはり、現場の従業員と、現場の状況を知らず経理のことしか頭にない人間との意識の乖離、といった構図は、某牛乳メーカーばかりでなく、どこにでもあるということか。

鳴子ホテルでのことを、いろいろ書いてきたので、最後に誤解のないよう、次のことは書いておきたいと思う。 鳴子ホテルは、99パーセントの従業員の方々は、みんな献身的で親切だし、温泉も料理も申し分ないし、 なかなかお勧めのホテルである。 そもそも落ち着いた温泉街の雰囲気自体も素晴らしいので、鳴子温泉には、これからも心のふるさとして、さびれずにいて欲しいものである。 ただ、今回、愚直なフロント係(男)のせいで、せっかくの滞在全体の印象が、少々後味の悪いものになってしまったのが、極めて残念といったところである。

(2000年8月12日)

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