さて、「トリスタン」の初日から、1週間がたってしまいました。 個人的には、残念ながら、ザルツブルクで受けた感銘には及ばなかったというのが、 正直な感想です (座席は1階11列目と奮発したのですが、上階の席の方が私にはよかったのかも)。 東京文化会館のピットが深すぎるのも、BPOの魅力を半減させてくれたし、 あんな演出なら、むしろ演奏会形式で上演してくれた方が、数倍は楽しめたのにと思うと、少々残念な印象が残りました。
ご参考までに、木管楽器奏者の布陣を記しておきます。間違いがあれば、お知らせ下さい。
フルート: ブラウ、庄田さん、デュンシェーデ
オーボエ: マイヤー、ハルトマン、ドミニク
クラリネット: シュテファンス、ガイスラー、プライス
ファゴット: シュヴァイゲルト、ヴァイトマン、マリオン嬢
なお、ザルツブルクでは以下のような布陣でしたので、かなりの異動が見られます。
フルート: パユ、ハーゼル、イエェルカ嬢
オーボエ: シェレンベルガー、ヴィットマン、ドミニク
クラリネット: フックス、ザイファルト、プライス
ファゴット: シュヴァイゲルト、トローク、ヴァイトマン
もちろん、重要なイングリッシュホルン(ドミニク)とバスクラ(プライス)は、そのままですが。 あと、ティンパニは、ヴェルツェルからゼーガースに変わっていました。
ザルツブルクとの違いというと、音楽面では、第3幕でのイゾルデの到着を知らせるシグナル、ザルツブルクではイングリッシュホルン(ドミニク)の音が拡声器を通して聞こえ、 やや興ざめだったのですが、 今回はホルツトランペットでした。ヘボモンケさんの情報では、ヴェレンツェイが吹いたとのこと。 それで、大変見事だったのですね(^_^)。 もっとも、うま過ぎて、ホルツトランペットというより、普通のトランペットの音に聞こえたのですが。 ちなみに、ベルリンでの録音では、ホルツトランペットが鳴っているので、こちらは、ひょっとして、グロートが吹いていた可能性もありますね。
それから、第2幕前半の「昼の対話」、ベルリンでもザルツブルクでもカットせずに上演されましたが、日本公演では、見事にカットされました。 歌手への配慮なのか、指揮者への配慮なのか、まあ、とにかく今回はやむを得なかったということでしょう。 (あと、コンバスが8本から7本、ハープも2台から1台といった小さな違いもありましたが ^_^;)
で、演奏ですが、今回は、一言でいうと、アバド優位のトリスタンといったところでしょうか。BPOも、アバドの指揮に忠実に演奏していたようです。 私がザルツブルクで聞いた演奏は、BPO優位のトリスタン。 演奏が進むにつれ、指揮台のアバドの存在感が希薄になり、完全にBPOのトリスタン(^_^)。
ご参考までに、ザルツブルクでも一緒だった某L氏との会場での会話:
私 「ザルツブルクと比べると、今日のBPOはアバドの指揮をなぞってるだけで、ゲネプロみたいな感じじゃないですか。」
某L氏 「いや、今日の方がアバドのやりたい演奏だと思うよ。 ザルツブルクでは、音楽祭の最終日ということもあって、BPOが完全に爆発しちゃってましたからね。」
なるほど、さすが、経験豊かな方のものの見方は、実に的確だと感心したのでした。
そんな訳で、ザルツブルクでは、最後の愛の死は、割とあっさりした指揮ぶりで、逆にあまり印象に残っていないのですが、 今回は、愛の死に、だいぶ気合いが入っていたように感じました。 愛の死の最初の1小節、すごい超スローテンポで意表をつかれたのですが、 もっと驚いたのは、終演後のカーテンコールでのアバドのやせた姿。 病後のアバドがあそこで見せたスローテンポ、これだけは、今後も長く記憶に残ることでしょう。
以上、あまり冴えない雑感ですが(_ _)、どうかご勘弁下さい。
そのアバドの「トリスタン」ですが、昨年、ザルツブルクで聞いたときには、 「このオペラって、こんなにテンポの動きが激しかったかしら?」と驚いたほど、 極めて意欲的なテンポの変化の伴った情熱的な演奏だったような記憶があります。 第3幕でも、第2場でトリスタンが亡くなる直前の5拍子の個所など、ものすごい勢いとパワーの炸裂といった感じだったような。 もっとも、昨年の上演、第3幕は、こちらが勉強不足だったためか、 よく理解して楽しむというところまでいかなかったような気もするので、今度の日本公演、特に第3幕をじっくり鑑賞したいと考えていたのですが。 ということで、今回も、突貫工事で、 「トリスタン」分析のページの第3幕を、なんとかアップしました。 日本公演も無事に始まるといいのですがね。
それから、11月8, 9, 10日が、アバドのワーグナー・プログラム。 「オランダ人」より序曲と「期限は切れた」、 「トリスタン」の前奏曲、 「ワルキューレ」よりヴォータンの告別、 「パルジファル」の前奏曲、そして、ワルキューレの騎行。 バリトンはターフェル。 好評だったようですね。
そして、11月23日より日本公演。 BPOによる「トリスタン」の全曲上演が、いよいよ日本でも実現するわけです。 考えてみると、もうあまり時間がないのですね。 昨年のザルツブルク・イースター音楽祭、4月5日の上演での奇跡的な名演、 特に第2幕の演奏が圧巻だったことを思い出します。 ということで、その時の感銘を反芻しながら、 「トリスタン」分析のページは、第2幕を一気に完成させました。 大急ぎで作ったので(徹夜での突貫作業 ^_^;)、拙い部分など多々あろうかと思いますが、自分の勉強も兼ねての作業ですので、ご勘弁ください。 今度の週末には、第3幕が仕上がるといいのですが、まあ、そのつもりで頑張ってみたいと思います。
当初は、「ベルリン夏の夜の夢」として始まったようです。 メンデルスゾーンの「夏の夜の夢」の音楽なども演奏されてます。 最初の1984年は、ヘンデルの「王宮の花火」で始まったようですが、1990年の2回目のバレンボイムの年は、アンコールの「ワルキューレの騎行」で、一緒に花火を上がったとか。 また、最近では最後に演奏されるのが恒例の「ベルリンの風」も、演奏されるようになったのは、1989年頃からで、当初は、「ラデツキー行進曲」で締めくくられたりしたようです。 それから、あえて誰とは書きませんが(^_^;)、交響曲を取り上げた硬派?の指揮者もいるのですね。
その10月のBPO、詳細は公式HPを見ていただくとして、まあ、ざっと以下のような感じ。
その後、ベルリンに戻って、第50回 ベルリン芸術週間。 今年のテーマは、《百年の響き (Jahrhundertklang)》。 今世紀の音楽を回顧するような意欲的なプログラムが、様々なオーケストラによって組まれています。 BPOは9月6日から登場。 BPOのベルリンでのこの開幕コンサートも、アバドに代わって、ジンマンが振ることになったようです。 アバドには、下旬のストラヴィンスキーでは復帰して欲しいものです。
なお、個人的には、18日、19日のラトル、23日のヤンソンスを聞ければと考えているのですが、どうなりますやら(^_^;)。