1998年4月10日

4月10日は、ホテルも決まってない状態で、ウィーンからザルツブルクへ移動 (直前にいろいろファックスなどで問い合わせたものの、音楽祭期間中だけあって、便利で手頃なところは、どこも満室)。 それはさておき、この日は午前11時から、モーツァルテウムでBPOの室内楽シリーズのコントラプンクテがあり、しかもその中には、ティンパニのゼーガースも出演するバルトーク「2台のピアノと打楽器のためのソナタ」も含まれている。 これを逃す手はない!ということで、前日の晩の「リエンツィ」の余韻もさめやらぬ朝の午前5時前には起床し、ウィーン西駅5時50分発の列車でザルツブルクに向かい、8時55分に到着。 まだ返答がなかった旧市街のホテル・エレファントに駅からダメモトで電話してみると、4泊は無理だが、2泊ならOKとのこと。 やれやれということで、タクシーでホテルに直行。 荷物をフロントに預けてから、開演まで街中をブラブラし、イースター期間中の街中の雰囲気を味わう。 会場のモーツァルテムで当日券を購入。 100シリングと申し訳ないような入場料の上、相変わらずの楽勝(そう超満員ではないということ)。

Kontrapunkte V

Gubaidulina:  Descensio
Janacek:  Jugend
Strawinsky:  In Memoriam Dylan Thomas
Bartok:  Sonate für zwei Klaviere und Schlagzeug

1曲目のグバイドゥリーナの曲は、3本のトロンボーン(ボイマー、ゲスリング、オット)、3人の打楽器奏者(シンドルベック、ゼーガース、ミュラー)、ハープ(ラングラメ)と鍵盤楽器(ベッカー)のための20分くらいの曲。 前半はトロンボーン奏者(オット?)が指揮をして、ゼーガースがスタンド・シンバルをトライアングルの撥でこすったりしながら曲が進んでいく。 後半に移り、トロンボーンがコラールを吹き始めると、指揮がゼーガースに変わり、右手で指揮をしながら、左手でトライアングルの撥でシンバルをこするという、なかなかの妙技で魅せてくれた。 2曲目のヤナーチェク「青春」は、管楽六重奏曲。 ハーゼル(Fl.)、ヴィトマン(Ob.)、フックス(Kl.)、トローク(Fg.)、マクウィリアム(Hr.)、プライス(Basskl.)のメンバーによる見事な演奏。 このフィルハーモニー管楽六重奏団のクラリネットは本来はザイファルトなのだが、病気でフックスが代演するとのコメントが、演奏前にリーダーと思われるハーゼルから伝えられた。 このハーゼルというフルート奏者、ベルリン・フィルの正式の団員ではないようなのだが、どういう人なのだろうか?  休憩後のストラヴィンスキーは、テノール(ラングリッジ)、弦楽四重奏(フィルハーモニア四重奏団:スラブラヴァ、シュターデルマン、レーザ、ディーセルホルスト)、4本のトロンボーン(アルント、ボイマー、ゲスリング、オット)による演奏。 そして、最後のバルトーク。 ピアノはマィェラ・シュトックハウゼンとマルクス・ベッカー。 打楽器は、ティンパニを中心に演奏するゼーガース、スネアや鍵盤打楽器を中心に演奏するシンドルベック。 どちらも唖然とする上手さで、客席も大いに沸き、演奏後、拍手もなかなか止まず、終楽章の後半をアンコールして終了。 やはり、わざわざ午前中から聞きにくる人たちだけあって、客の質が高いように思われた。

このあと、ホテルに戻り、夕方まで一眠りして、18時30分からアバド指揮のマーラー交響曲第3番に備える。

Mahler:  Symphonie Nr.3 d-Moll

Claudio Abbado/Berliner Philharmonisches Orchester
Marjana Lipovsek (Mezzosopran)
Slowakischer Philharmonischer Chor Bratislava
Salzburger Chorknaben und -mädchen

会場は、もちろん祝祭大劇場。 今回は2階5列目のど真ん中の席(Reihe 5, Sitz 17)で、眺めは抜群なのだが、少々落ち着かないような?贅沢な気分(^_^;)  この日はステージ上に吊るされたマイクが、他の日よりも目立っていたようで、2階席からだと、ちょっと邪魔な感じもした(CSで放送されたようだが、残念ながら聞いていない)。 弦楽器の編成は 18-16-14-12-10 という大き目ながら、出てくる音が薄味というのは相変わらず。 トップの布陣は 安永/スタブラヴァ(1.Vn.)、タウビッツ(2.Vn.)、レーザ(Vla.)、ファウスト/クヴァント(Vc.)、シュトル/ヴァッツェル(Kb.)。 木管は、パユ(Fl.)、シェレンベルガー(Ob.)、フックス(Cl.)、ダミアーノ(Fg.)、金管は、マスクニティ(Hr.)、クレッツァー(Trp.)、アルント(Trb.)。 演奏は、第1楽章から淡々と進んでいく。 シンバルは冒頭部は2人、再現部は3人で叩いていたが、左の人から右の人にかけて、楽器のサイズが段々と大きくなっているのも見物。 40分にも及ぶ長い第1楽章の演奏、アバド/BPOの演奏を楽しんだという記憶はあるものの、あまり強い印象が残っていないのも事実(_ _)。 同時にまた、「自然」を謳歌するこの曲の自然の流れに乗った演奏に、不満を覚えることがなかったのも事実(^_^;)。 いずれにせよ、オケの力量に任せきった演奏ということで、ベルリン・フィルの名人芸を存分に楽しめる演奏であることは当然のこと。

第2楽章と第3楽章は続けて演奏されたが、第3楽章のポストホルン(たぶんエキストラ)もなかなか見事。 ちなみに、この曲はザルツブルク郊外の湖のほとりで作曲されたせいか、ザルツブルクでこのポストホルンを聞くと、なかなか気分が出る(^_^)。 この日の演奏、やはり圧巻は終楽章。 何といっても、このオケの弦楽器は素晴らしい!  特に最後の方では、コントラバスが楽器を大きく揺すりながらの熱演で(指揮者にお構いなしに?)オケ全体を主導し、日本公演でのマーラー9番の終楽章を彷彿させるような迫真の演奏となった。 終演後もすぐには拍手が起きず、10秒後くらいたって起きた拍手もすぐに止み、しばらくしてからやっと盛大な拍手となった。 全体としては、重厚で厚みのある演奏ではないが、それが不満となるような曲ではなかったのが、このコンビには向いていたという印象。 最後は、自然への畏敬を感じさせる演奏になっていたように思う。


プログラム一覧   4月10日   4月11日   4月12日   4月13日