1999年4月3日(土)
この日も、また午前中から音楽鑑賞である(^_^)。モーツァルテウムでのコントラプンクテ。 さすがに、コントラプンクテまで聞きに行く日本人は、極めてわずかである。 もっとも、客席自体、平土間で6割程度の入りではある(しかも、2階席は相変わらず閉鎖)。
George Benjamin: Viola, viola
Brett Dean: Voices of Angels
Olivier Messiaen: Quatour pour la fin du temps
Wolfram Christ, Henrik Schaefer, Viola
Mi-Kyung Lee, Violine Brett Dean, Viola
Ludwig Quandt, Violoncello
Esko Laine, Baß Pierre-Laurent Aimard, Klavier
Mi-Kyung Lee, Violine Georg Faust, Violoncello
Wenzel Fuchs, Klarinette Pierre-Laurent Aimard, Klavier
1曲目はベンヤミン(1960年生まれ)の2台のヴィオラのための10〜15分くらいの曲。クリストとシェーファーのヴィオラ。 2曲目はBPOのヴィオラ奏者ブレット・ディーン(1961年生まれ)の曲。 作曲者自身も、演奏に参加。30分くらいの長さだったが、最後の方で、コントラバスのライネがティンパニの撥で弦を叩いていた覚えがある。曲については、ほとんど失念。 なお、最近の情報では、ディーンは1999年末で退団し、郷里のオーストラリアで作曲活動に専念するとのこと。 99年6月のラトル/BPOの2種類のコンサートのうち、一つがハイドンの交響第70番、モーツァルトのコンサートアリア(クヴァストホフのバリトン)、ディーンの「カルロ」、ハイドンの交響曲第90番というものだった。 この3曲目の「カルロ」は、ディーンが影響を受けた作曲家カルロ・ジェズアルドのことらしい。 このコンサートの写真は、最近、アルファベータから出版された 写真集「ベルリン・フィルハーモニー」 で見ることができる。
で、このコンサートのメインは、休憩後のメシアンの「世の終わりのための四重奏曲」。 期待を大幅に上回る、なかなか優れた演奏であった。 ピアノのエマールは、今シーズンのBPOの「トゥランガリラ交響曲」の演奏でもピアノで参加しているが、メシアンのスペシャリストでもあるのか、この日も、体を動かしながらの意欲的な熱演。 聴衆を魅了しながら、巧みに聞かせる演奏で楽しませてくれた。 第3楽章はクラのソロの曲だが、ここではフックスが、エマールにに負けず劣らずの魅せる聞かせる演奏を展開。 チェロが活躍する第5楽章では、今度はファウストが魅せる聞かせるで、相変わらず水準の高いコントラプンクテを堪能。 ヴァイオリンのリーはヨーロッパで活躍する韓国出身の女性奏者。 もちろん高い技術でしっかり演奏を引き締めていた。 ベルリンでもしばしば室内楽活動をしているようで、97年のコントラプンクテでも、リゲティのホルントリオをドーアと一緒に共演していたのを聞いたことがある。 入場料は、前回同様、300シリング(約3000円)。 客席には、BPOの団員の人も聞きに来ていて、私の前の席には、ヴァイオリンで入団したばかりの、ウルズラ・ショホさんという清楚な女性が座っていた。
さて、このあとは、今年はせっかく天気もいいのだし(例年だと、もっと気温が低く、雨が降ったり、雪がぱらつくこともある)、少しは観光もしてみようかと(この日は、書店も楽譜店も閉まっているし)、これまでまだ一度も行っていなかった(^_^;)街のシンボル、ホーエンザルツブルク城へ登ってみようかと一大決意。 ケーブルカーの駅は込んでいたので、歩いて登ろうとしたのだが、途中の料金所で、これまた、人がいっぱい。結局、この日の城砦行きは断念。 せっかくの決意は、まだ人の少ない翌朝まで延ばすことにしたのだった。
あとは夕方の祝祭大劇場でのBPOのコンサートである。 指揮はハイティンク。 ちなみに、今回、完売なのは「トリスタン」だけで、この日は、どうも、当日券も売られていた感じである。 それにしても、今回のマーラー、どうして4番なのか、という不満は、最後まで消えず。 どうせなら、5番か6番を聞きたいのに。 この日の2曲とも、デンマークのソプラノのダム-イェンセンが登場。 ハイティンクがこのソプラノを使いたかったから、4番にしたのだろうか。アバドで、97年が2番、98年が3番と続いてきたが、2000年は、マズアの1番である。2001年もマーラーはあるのだろうか。
Orchesterkonzert (3. April 18:30 Uhr) Berliner Philharmonisches Orchester BRITTEN Les Illuminations op.18 MAHLER Symphinie Nr.4 G-Dur Solistin Inge Dam-Jensen Dirigent Bernard Haitink
ブリテンの「イリュミナシオン」は、ソプラノ独唱と弦楽器だけのオケ (編成は12, 10, 8, 6, 4)による演奏。 コンマスはスタブラヴァ。その横にブラッハー。 ヴィオラとチェロは、昼にも出演したクリストとファウスト。 コントラバスは、シュトルは休みで、ライネがトップ。 その横はリーゲルバウアーで、ここでも、BPOの新時代を感じさせる。 曲は、ブリテンらしい、独特の面白い奏法があったように思う。
さて、後半のマーラー4番。 今回ザルツブルクに来て、やっと初めて第1ヴァイオリン16人のフル編成の響きだ。 とはいえ、弦の厚みはまあまあといったところで、メータやヤンソンスが振ったシュトラウス程ではなかった。ハイティンクもアバドのように、薄味路線なのかも。 木管のトップは、ブラウ、マイヤー、フックス、ダミアーノで、それぞれ見事だったが、 やはり、オーボエのマイヤーが飛び抜けていたような感じ。 第4楽章では、クラのフックスも、昼に続いての大活躍。 しかし、イングリッシュ・ホルンのドミニクが、全曲の一番最後で、 おいしいところを全部持っていってしまったような終わり方でもあった。 というように、木管楽器に注目しただけでも、聞きごたえ十分といったところ。 フルートもブラウ、イェルカ嬢、ハーゼル、デュンシェーデという、現在のBPO最強のフルート陣による第1楽章など、申し分なし。
金管は、トランペットのトップがエキストラ。 非常に巧みな人で、安心して聞いていたが、BPOにしては、音に厚みがあり過ぎるかなぁという印象だった。 最近の「パイパーズ」の記事と写真によると、ウィーン・フィルの首席奏者を務めていたハンス・ガンシュだった模様。 そうと知っていれば、もっとじっくり味わって聞いたのだが(^_^;)、まあ、貴重な体験だったというべきか。 ホルンのトップはドーアで、もちろん悪いはずはないのだが、これだけ名手の揃ったオケに中では、このぐらい吹けて当然といった感じなので、特に目立ってうまいという印象を与えないのは、気の毒というか。 ティンパニはゼーガースで、もちろん第3楽章など、楽しませてもらった。
全体としては、さすがBPOという、天国的な演奏を繰り広げてくれたのだが、やはり曲のせいか、指揮者のせいか、あまり強いインパクトは受けなかったというのが正直な感想。 いい演奏だが、圧倒的な演奏ではないというか。 結局、5番か6番を聞きたかったよう、という不満は最後まで残ったのだった。 こんなことを書くと、音楽を聞く資格はないと思われるかもしれないが。
なお、この日の終演後は、楽屋出口で待機。 ドミニクに「新世界」のCDでイングリッシュホルンを吹いているかどうかを確認し( サロ様城主 のAnjaさんに、掲示板でお問い合わせいただいていた)、 もしそうなら、このCDにサインをもらおうという魂胆。 日本人のフックス夫人もおられたので、簡単にご挨拶。 「彼は長身で目立つから、すぐわかりますよ」とのこと。 「新世界」のCD、日本先行発売だったようで、ドミニク自身はCD化されたことを知らなかったが、もちろん、自分が吹いているとのことで、サインも頂戴した。 ついでに、恐る恐る、身長も尋ねてみると、2メートル4センチとのこと。 「トリスタン」第3幕のイングリッシュホルンのソロを吹くことも確認するなど、 情報収集も怠らず(^_^;)。 これで、「トリスタン」を聞く楽しみが、また一つ増えたのだった。