雑  感
1998年3月


大変に遅くなりましたが、2月22日に放送されたラトル指揮の演奏会について一応(^_^;)簡単に触れておきます。 シンフォニア(ベリオ)の実演風景というのは、ブーレーズ/シカゴ響の来日公演の放映を見たことがあるだけですが、いつ見ても、なかなか面白いものですね。機会があったら、実演で体験してみたいものです。 マーラーはラトル自身の説明があった通り、意欲的なテンポ設定が聞き物でしたが、なかなか成功していたのではないでしょうか。 念のため、各パートのトップ奏者について、記録を兼ねてまとめておきます。 参考になる方がおられましたら、幸いです。

弦楽器
ファーストセカンドヴィオラチェロバス
ブラッハー/安永タウビッツ?クリストシュトル

木管楽器
フルートオーボエクラリネットファゴット
パユマイアーフックスダミアーノ

金管楽器とティンパニ
ホルントランペットトロンボーンティンパニ
クレッツァーゲスリングゼーガース

トロンボーンはマーラー4番には出番がなく、ベリオだけですので、念のため。 第2ヴァイオリンはヴェストファール(白髭を生やした大変に雰囲気と趣きのあった人で、フルトヴェングラー時代から在籍した団員で最後の一人となった)の後任のタウビッツでほぼ間違いないと思います(ジルヴェスターでもトップだったし)。 ホルンはザイフェルトの後任の Maskuniitty の可能性が高いですが、まだ自身がないので、 保留ということで。 ついでに打楽器ですが、左からミュラー(鈴)、シンドルベック(鉄琴)、?(シンバル)、シュルツ(大太鼓)と並んでいて、本来ならレムベンスもいてもよさそうなものですが、彼の後任に決まったという新人(アカデミーの学生)が出演していたのかなとか思ったりしました。
ベルリン・フィルのマーラー4番というと、今回の放映の他に、1991年12月にシャウシュピールハウスでハイティンクが指揮した演奏も残されていますが(フィリップスよりLDが発売された)、こちらではコンサートマスターがシュピーラー、ホルンがザイフェルト、コントラバスがツェペリッツといった陣容で、これまた一見の価値以上のものがあるのではないかと思われますので、ご紹介まで。

さてこれ以外に最近、私にとって興味深かったのは、3月1日にFMで放送されたシュタイン/バンベルク交響楽団のリンツでの昨秋の演奏会のライヴ録音。 このコンビのドイツ演奏旅行にベルリン・フィルを退団したティンパニのフォーグラーが参加したという情報を、先にフォーグラー近況でお伝えしましたが(情報源はN響の指揮で来日したシュタイン自身で、彼もフォーグラーのプレイを絶賛していたらしい)、 この録音を聞いてると、ティンパニの音はどうも90%以上、ほぼフォーグラーに間違いないように思われます。 前半のメンデルスゾーンの第1交響曲、モーツァルトのピアノ協奏曲第20番でも、その存在感はさすがでしたし、圧巻は最後の「ツァラトゥストラ」。冒頭を聞いて思わず涙が出そうになりました。 「ツァラトゥストラ」はしっかり録音しましたが、全体としてシュタインらしい落ち着いた曲の運びで(最後の方の盛り上がりは録音で聞いてると、ちょっとゆっくり過ぎるかもしれませんが)、なかなかいい演奏だったのではないかと思います。 ティンパニ奏者一人が、オケ全体を引き締めた例としては、ゾンダーマン(ドレスデン)のN響での例もありますが、昨秋のベルリン国立歌劇場来日公演に参加したベルリン・フィルのゼーガースも見事でした。 「ワルキューレ」第2幕の「死の告知」の場面のソロでは、すっかりティンパニの音に聞き惚れてしまい、舞台上での出来事(ジークムントの顔が白塗りになる)をうっかり見逃すところでした。

( 3月3日 )

3月13日、久しぶりに大阪へ出かけて、大阪センチュリー交響楽団の演奏会を聞いてきました。会場はいずみホール。 このオケもホールも初めてだったのですが、どちらも大変素晴らしいもので、満足して帰ってきました。 指揮は高関健。曲目はペルト:カントゥス(ブリテン追悼)、マルタン:7つの管楽器と弦楽とティンパニのための協奏曲、アイヴス:交響曲第2番。 オケは弦楽器が第1ヴァイオリン10名〜コントラバス4名という小編成ながら、演奏への意欲も技量も十分感じられる内容でした。 最後のアイブスの交響曲も、最後の方の盛り上がりはなかなか感動的でした。 ただ2曲目のマルタン、7人の管楽器奏者の名前はきちんとプログラムに記載され、写真やプロフィールも載っているのですが、どうせなら、ティンパニ奏者も同じ扱いにして欲しかったですね。 団員名簿によると、安永友昭さんという若い人のようですが、プラスチックの皮でなく、本皮のティンパニを使用していて、なかなか見事な音を出していました。

この日は、あとイースター音楽祭に備えて、楽譜などもいくつか購入しました。 「ボリス」はドーヴァーのスコア。もちろんこれはリムスキー=コルサコフ版で、やはりずいぶんと違いますね(まだ最初しか見比べてませんが)。 あとタルコフスキー演出のLDも購入したものの、じっくり見る時間があるかどうか。 あとヤンソンスが指揮するカラヤン追悼演奏会で、アルプス交響曲の前に演奏されるショーソンの 「愛と海の詩」のピアノ伴奏譜。 当日歌うマイアーのCDが1200円でEMIから出ていて(ムーティ指揮)、これは購入していたのですが、音でだけ聞いても、今一つつかみ所がなく、楽譜も購入してみたという訳です。 それで理解が深まったという訳でもないのですが、この中の「りらの花咲くころ」の歌の旋律には、何となくはまれるような気もしてきました。 単独でも演奏されるそうですね。せっかく聞きに行くのだから、少しでも感動を深められればと思っているのですが。 あとアーノンクールのLDでベートーヴェンの交響曲のリハーサル風景の収録されたもの(4000円の限定盤で、これも先の「ボリス」同様に地方ではもはや入手困難)。 彼は今回は「英雄」を演奏する訳ですが、やはり事前にこの録画を見ておいてよかったと思わされる素晴らしい内容でした。「英雄」が最初の方だけなのは、少々残念ですが。

3月17日

アバド/BPOのマーラーの交響曲3番、ベルリンで3月5〜7日に予定通り演奏されたようですね。 このあと、4月のザルツブルク、5月のヨーロッパ・ツアー、そして10月の日本公演などで演奏されるようです。 ベルリンでの演奏については、web 上では、Classical CD Collection で、PC−VANでもお馴染みの tsujimoto さんの詳細な報告が読めますが、ここをお読みいただいている方なら、もうご存知かと。 Niftyserveの方では、Sさん(Mahler-Jugendorchester Sendai 指揮者)が報告されてますが、表には書かれていない貴重な情報も教えていただきました。 まあ、例によって、打楽器ネタですが(^_^;)、シンバル奏者として、何と、フォーグラーがエキストラで出演していたのだそうです。存在感も彼が一番あったそうです。 ちなみに、シンバル、第1楽章の冒頭部では、指定通りの2人、(ホルンのテーマの)再現するところでは、3人(指定は mehrere )で叩いていたそうです。それだけでも楽しみ楽しみ。 ザルツブルクでもフォーグラーが参加してくれると、非常にうれしいのですが。 終楽章のティンパニのソロも、ゼーガースが両手で叩いていたとか。 演奏も、マーラーの曲の中では、3番はアバドには一番向いた曲目のようで、 アバドのマーラーに否定的な人でも楽しめるのではないかなと期待しています。
3月20日

このページも、あまり気張らずに、ちょくちょく書き込んでいこうかと思います。 先週の17日から「ペルリン・フィルの部屋」メインページの下の方に、新しいアクセスカウンターを設置したのですが、停滞気味の最近でも、1週間で100回近いアクセスがあり、誠にありがたいことと痛感しております。

さて、昨晩、小濱妙美(こはま たえみ)ソプラノリサイタルが、香川県県民ホール小ホールで開催されました。 800人程のホールですが、ほぼ満席でした。 小濱さんは、香川県出身で、昨秋の新国立劇場のオープニング・シリーズでの「ローエングリン」で、エルザを歌われた方です。 地元でのリサイタルも、ほぼ1〜2年に1度はされていて、いつも楽しみにしている次第。 昨晩は、前半にヴォルフ「ゲーテ歌曲集」からミニヨン関連の歌をまとめて数曲、それからムソルグスキー「子供部屋」と題された歌曲集を歌い、最近の境地を聞かせてくれました。 後半は、「アイーダ」と「トスカ」からのアリア(勝ちて帰れ、歌に生き恋に生き)をダイナミックにたっぷりと歌ったあと、女声8名、男声5名の合唱(お弟子さんが中心のよう)をバックにやりたい放題(^_^) まず「メリー・ウィドウ」のワルツやヴィリアの歌で、舞台演出も入れてオペレッタの雰囲気を盛り立て、続く同じくレハールの「ジュディッタ」からの歌では、踊りやタンバリンなども交えての熱演。 プログラムの最後は、落葉松(小林秀雄)をバックコーラス入りで。 アンコールもガーシュイン「サマー・ターム」(これもステージ裏から合唱の声)、続いての「カルメン」のハバネラでも合唱が大活躍で、カルメンが客席の通路で歌いながら男性とやり取りする場面には客席からも大爆笑。 それから、サウンド・オブ・ミュージックの最後の歌(お姉さんが混声合唱用にアレンジしたとか)では、ステージ上の合唱の人に、一人一人握手。 最後の日本歌曲(曲名不詳 ^_^;)を全員合唱という形で歌い、リサイタルが終了。 今までのリサイタルでは、もっとも雰囲気がなごんだものとなりました。

この小濱さん、1993年9月にブラウンシュヴァイク歌劇場の「タンホイザー」でのエリーザベトでドイツ・デビューを果たしています。 その時の契約書を私が訳させていただいたりもしたのですが(文化庁や藤原歌劇団に提出するとか)、私にとって有り難かったのは、このドイツ・デビューを観に行くということを口実にしてドイツ旅行を計画することができたことでした。 小濱さんの舞台を観たのは、9月10日のプレミエと14日の2回目の上演の2日だったのですが、 それ以外の日には、5日と6日のベルリン・フィルのシーズン開幕演奏会(メインはアバド指揮の「悲愴」)、8日のヴィーンでの「ワルキューレ」、 9日のミュンヘン・フィルの開幕演奏会(しかも創立100周年記念の特別演奏会)でチェリビダッケ指揮の「展覧会の絵」、12日の同じコンビによるブルックナー8番、15日のシルマー/ベルリン・フィルの家庭交響曲...... ということも思い出しながら、またまた感謝の念を新たにした昨晩でもあった訳です。

さて今後の更新予定ですが、情報のページに今年のイースター音楽祭の概要を明日にでもアップする予定です。 またその後は、昨年のイースター音楽祭の報告を、今年のが始まらないうちにアップしておこうかと準備を進めておりますので、今後ともよろしくお願いします。

3月25日

「レコード芸術」4月号で、一番興味深かったのは、244頁の海外雑誌切抜帳「カラヤンのもとを去りチェリビダッケに走った男のインタビュー」。 ヘルムート・ニコライ(53歳と記載されているが、1943年10月生まれ)というヴィオラ奏者が、1981年にベルリン・フィルを退団し、ミュンヘン・フィルのソロ・ヴィオラ奏者として移籍したというお話。 1981年というと、まだザビーネ・マイアー事件の勃発前、創立100周年目を目前に控え、カラヤン時代も円熟期に差しかかる頃といえるのではないでしょうか。 マーラー9番や「アルペン」を取り上げ、一番油の乗り切っていた時期だと思っていただけに、カラヤンもチェリビダッケも両方好きな(^_^;)私としては、少々複雑な心境ではあります。 ベルリン・フィル在籍期間を調べてみると、1968年9月1日〜1974年8月31日、1975年9月1日〜1981年8月31日と、途中で1年の空白があるようで、いろいろ考えるところの多い方なのでしょうか。 ミュンヘン・フィルのヴィオラ奏者というと、アンネマリー・ビンダーという女性のソロ奏者の印象が強く、特にチェリビダッケのブルックナー第4交響曲の演奏での、第1楽章の一番崇高な個所(297小節以降)での彼女の神々しい顔は未だに忘れられないものがありますが、このニコライも要注目の奏者だったようですね。 ヴァイラー「評伝チェリビダッケ」(春秋社)でも、彼の別のインタビューが引用されていました。 という訳で、このレコ芸のソース源である "FONO FORUM" 誌の1997年12月号をお持ちの方、 ひょっとしておられませんでしょうか(^_^;)
3月29日

ここを読んで下さる方がどの程度おられるのか、心もとない昨今ですが、いずれしばらく休載することになりますので、今日もまた何か書くことにします。 だいぶ暖かい気候になってきましたが、ザルツブルクは山岳地帯だから、まだまだ寒いのだろうと想像しています。 ヴィーンとザルツブルクといったら、やはり首都と田舎(いい意味で)といった大きい違いがあるのでしょうね。 気温も年間を通じて、サルツブルクの方がヴィーンより低いかもしれません。 夏は私は行ったことがないのでわかりませんが、避暑といった意味合いも出てくるのでしょうか。 まあ、その辺は実感としてはわかりませんが。

さてこのザルツブルクのイースター音楽祭も間近に迫ってきましたが、本日、安心のために「地球の歩き方:ウィーンとオーストリア」を購入してしまいました。 巻末にはヴィーンのオペラとコンサートのスケジュールまで載っていて、なかなか充実してきているようです。 で、一番有益だった情報は、特にオーストリアに限った話ではないのですが、2000年までのキリスト教祝祭日一覧表。 今年のイースターの日曜は4月12日、翌13日(月)に音楽祭最終日の「ボリス・ゴドゥフ」観劇。 そして来年1999年のイースターの日曜は4月4日とのこと。 とすると最終日の「トリスタン」公演は4月5日になるのかなと。 これだったら、春休み中なので、何とか見に行けるのではないかと密かに安堵した次第(^_^;) (だいたい、この音楽祭の会員に昨年からなったのも、怖いもの見たさ(^_^)で、来年の「トリスタン」を見ようかと思ったのが、そもそもの動機だったし。) で問題は、この先の2000年で、イースターの日曜が何と4月23日だとか。 「シモン・ボッカネグラ」をやる年のようですが、これは、さすがにちょっと不可能ですね。 今年ですらちょっと(というか、かなり)無理して出かけるというのに。 まだだいぶ先の話ですが、どなたか、代わりに行っていただける方(チケットを引き取っていただける方)を募集するかもしれませんので、その際にはよろしくお願いします。

3月30日

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